連載 「みんなの認知症見立て塾」出張講義 認知症「見立て」の知「対応」の技・第3回
「生活障害」はどう見るか
上野 秀樹
1
,
内田 直樹
2
1千葉大学医学部附属病院地域医療連携部
2医療法人すずらん会たろうクリニック
pp.486-489
発行日 2020年6月15日
Published Date 2020/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688201468
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本人と周囲の関係の中で生じるもの
前回、認知症とは「後天的になんらかの原因で脳の機能が低下してさまざまな認知機能障害(記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下)が生じ、これによって生活障害が生じている(生活に支障をきたしている)状態」であると紹介しました。その上で、「本人の要因にあたる認知機能障害」だけではなく、「本人と周囲の関係性の中で生じる生活障害」の見極めが、認知症の見立てにおいては重要であると述べました。
そこで今回は、その生活障害をどのように見るのかについて紹介していきます。前回「生活障害の解説をした後に、提示したケースの認知症はいつから始まっていたのかを解説する」とお伝えしていましたので、同じケースを再掲しておきます。
CASE
86歳男性のAさん。同世代の妻と2人暮らしをしています。元々は活動的な方で、仕事を定年退職した後も週3日、ゲートボールに行く習慣をもっていました。しかし、3〜4年ほど前からその頻度が減り、気付くと最近は自宅に引きこもり、テレビを観るばかりの生活となっています。
息子は仕事が忙しく、最近実家に帰ることができていませんでした。しかし、久しぶりに実家に帰り父に会った息子は、以前とは異なる父の活気のない様子に驚きました。しばらく話をしていると、「仕事は忙しいのか」と同じ質問を何度も繰り返します。思わず母に尋ねると、「最近、急にというわけではないが、1〜2年前から物忘れが増えてきた」と言います——。
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