特集 がんターミナルにおけるQOLの維持・向上
在宅で続けられる緩和ケアとしてのリハビリテーション
安部 能成
1
1千葉県がんセンター整形外科
pp.902-908
発行日 2008年11月15日
Published Date 2008/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101190
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血と汗と涙のリハビリ
●「リハビリテーション」という言葉
読者諸氏は,リハビリテーションという言葉から,どのようなものを想像されるだろうか。筆者が,紹介されてくる患者さんからしばしば耳にする言葉に「血と汗と涙のリハビリ」がある。あたかも国の名誉のために命がけで戦いを挑むオリムピック選手のように,「血」の滲むような努力を怠らず,重労働に「汗」を流しながら,その苦痛に「涙」して耐える姿がその言葉から浮かび上がる。このようなイメージは医学的リハビリテーションの展開した時代に作り上げられたものだった。
20世紀には世界大戦が2回も行なわれ,多くの人命が失われた。戦場に駆り出された多くの若者は,祖国のために戦い,しばしば名誉の負傷をうけた。その際,前線においてでさえ手厚く看護され,母国に送り返されたため,ケアされることは当然のことと考えられるようになった。しかし,このように,リハビリテーションが元傷痍軍人を対象とした機能回復訓練による社会復帰を意味するようになったのは現代に入ってからのことである。中世西欧に起源をもつこの言葉はそもそも宗教的復権を意味しており,産業革命期には犯罪者の更生を,20世紀に入ると災害復興から再就職,職業復帰を意味する言葉へと変遷してきた。
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