連載 ほんとの出会い・31
アメリカ人のおおらかさとベトナム人の悲しみと
岡田 真紀
pp.861
発行日 2008年10月15日
Published Date 2008/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101182
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前回は,友人の結婚式のために訪れたラスベガスという街のエネルギーの無駄使いについて書いたが,今回はアメリカ人のおおらかさについて。この結婚式の花嫁は日本人,花婿はアメリカ人。50歳の大台を超え,人生の酸いも甘いもかみ分けた二人の新たな門出だった。結婚式の前夜,花婿のお母さんが30名ほどの出席者全員をホテルのディナーに招待してくれた。80歳に手がとどこうという女性だが,うす紫の上品なドレスにふくよかな身体を包み,笑顔で私たち日本からの客ももてなしてくださった。
彼女は花婿の実の母親ではない。実母はすでに亡くなり,父親が再婚した相手でしかも父親ももう亡くなっている。彼女は70歳を越してから再婚し,そのお連れ合いがかたわらに寄り添う。このディナーのもう1人の主催者,花婿の伯母さんも花婿とは血のつながりがなく,花婿の義理の母の弟の妻である。この伯母さんの娘夫婦は,ニューヨークからラスベガスまで6時間かけて飛んできた。こんなに遠い縁戚なのに花婿の幸せを祝福しにお金も時間も割いて集まり,二度と会うこともない日本からのゲストを招いて宴を開く人たちに,アメリカ人の心の温かさを見た旅でもあった。
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