特集 成人の「発達障害」を理解する
成人の発達障害について―社会学の視点から
渡部 真
1
1横浜国立大学教育人間科学部
pp.748-751
発行日 2008年9月15日
Published Date 2008/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101154
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発達障害とラベリング論
成人の発達障害について,社会学の視点から見解を述べてみたい。社会学には,さまざまな理論や考え方があるが,発達障害を考えるにあたって有効な理論には,どのようなものがあるのだろうか。私はラベリング論ではないかと思う。そこで,まずラベリング論がどのようなものであるかを紹介する。
ラベリング論は,少年非行や犯罪のような逸脱行動をどう捉えたらよいかというところから出発した。1960年代のアメリカで生まれた理論で,H. S. ベッカー『アウトサイダーズ』1)が,1970年代になって日本でも紹介された。その後,非行原因論としてのラベリング理論は,日本でも大きな力をもつようになった。それまでの伝統的非行理論が,非行少年のおかれた環境や先天的条件に原因を求めたのに対し,ラベリング論は,全く新しい観点から,非行問題を考えた。
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