連載 チーム医療の現場から医療制度を考える・1【新連載】
いったい誰のための医療なのか
本田 宏
1
1埼玉県済生会栗橋病院外科
pp.68-69
発行日 2002年1月10日
Published Date 2002/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686902109
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「人手不足」による不幸はこうして襲いかかった
「病院で骨折して,どうして別の病院に移されるんだ」。田舎に独り残された父は,今でも同じことを繰り返し私に聞いてくる。昨秋,私の母は肺炎で入院し,夜間ベッドサイドに置かれた簡易トイレに立とうとして転倒し,大腿骨頭を骨折した。20年間リウマチでステロイド投与を受けていた母は杖でやっと歩行する状態だった。全身の状態が悪く,保存的治療を選択したが,別の病院へ転院を促され,骨折後10か月間寝たきりのまま亡くなった。
トイレに行く時の看護婦さんの介助について聞いてみたが,母は「看護婦さんはとても忙しそうで,頼めなかったよ」と答えた。「現場の人手不足」という現実,そして「病院は責任をもって,しっかりみるべきだ」という家族との間の大きなギャップ。いつも自分の患者さんに懸念していた医療事故がまさに自分の身内に振りかかった。
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