特集 エラーを防止できるチーム体制めざして
チーム医療は過誤撲滅の魔方陣たり得るのか―機能的チーム医療を探る
鷹野 和美
1
1広島県立保健福祉大学保健福祉学部
pp.842-846
発行日 2002年11月10日
Published Date 2002/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901538
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チーム医療を問い直す
このところ,医療過誤のニュースに全く触れないで済む日が少なくなっている。職員のプロ意識の変質だとか,帰属意識の希薄化などをその原因に求める論調,つまり内部告発者の増加が医療過誤を衆目に晒すことになったという意見も目立つ。医療界にはびこってきた密室的隠匿体質が改まるのは,受益者たる一般市民にとっては朗報に違いないが,それは表面化するかしないかの相違であって,最も重視されなければならない「過誤を未然に防ぐ行為」に直結するものではない。医療過誤の記事の後半部には決まって「チーム医療の不足が原因」「チーム医療の充実・強化によって過誤を防げ」というやや大きめの活字が躍る。異なるチーム医療観を有するであろう書き手と読者の双方を一瞬にして納得させてしまう,この「チーム医療」とは一体何なのであろうか。
病院外来を見てみよう。受付の医事課職員,外来看護師,医師,検査技師,放射線技師,薬剤師,会計の事務員の間を患者は次々と回される。病院職員が一般的にチーム医療と考えている装置のなかで,当の患者たちは,じつは院内を右往左往させられ疲弊しているのではないかと筆者は危惧している。病院職員のつくった狭隘な規則のなかで,戸惑い,いっそう不安にかられながらも,患者たちは受診行動を全うしようと我慢しているのではないだろうか。そうした疑問から,筆者はあえてチーム医療とは何なのかを正面から研究することにした。
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