隔月連載 家族のゆくえ・3
駅は酒場ではない
信田 さよ子
1
1原宿カウンセリングセンター
pp.378-381
発行日 2001年5月10日
Published Date 2001/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901419
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3人の死者たち
1月26日金曜日,ひとしお寒さが身にしみる夜,東京の中心部の通勤客でごったがえすJR駅構内で,ある事件が起きた。
山手線の新大久保駅で1人の男性がホームから転落した。それを目撃した2人の男性が彼を救出しようとして線路に飛び込んだ。そして,転落した最初の男性と,救出しようとした2人の計3人が死亡するという痛ましい結果をもたらした。事件が起きたちょうどそのとき,私は,いつものように金曜の夜恒例のグループカウンセリングを行なっていた。われわれのセンターのミーティングルームは,山の手線が窓のすぐ近くを走っているため,その騒音で参加者の声が時々聞き取れないこともある。しかし,この晩はなぜか全く電車の音が聞こえなかった。後から考えると,その事件のせいで山手線が止まっていたからだと納得がいった。
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