連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・193
作曲家の苦悩,あふれ出た名曲
柳田 邦男
pp.854-855
発行日 2022年10月10日
Published Date 2022/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686202255
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私は戦中・戦後の混乱期に小中学生時代を田舎町で過ごしたので,少年期からピアノやヴァイオリンを習うとか,ギターになじむといった音楽環境には縁遠かった。しかし,父の遺品なのか,古書店を開いていた12歳上の長兄が買ったのか,記憶がはっきりしないのだが,箱型の竹針蓄音機とクラシック名曲のSPレコードがあった。
しかし,家のなかにクラシックの音楽が流れているのを聴いたことはなかった。小学校5年生の日曜日の午後,退屈しのぎに,レコードをかけてみた。アルバムの解説文を読み,まず選んだのは,いかにも少年好みのスッペの「軽騎兵」序曲だった。トランペットとホルンによる勇ましい出だしに,私はすぐに魅せられた。
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