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はじめに
ショーンは,現在の専門家は専門分化した自らの領域を超える課題にクライアントとともに立ち向かっており,それまでの「技術的熟達者」とは異なる専門家像として「行為の中の省察」に基づく「反省的実践家(reflective practitioner)」という専門家像を提唱した1)。看護師も多様で複雑かつ変化の著しい現場で活動する専門職に含まれるため,看護におけるリフレクションの意義や重要性が徐々に浸透2)してきており,近年,新人看護師教育においてリフレクションが重要視されている。
出雲市民病院(以下,当院:表1)は家庭医療専門医研修施設である。家庭医療専門医の研修は実践とリフレクションを中心としており,構造化された自己評価,指導医との対話でリフレクションを行っている。筆者(高橋)は,新人看護師の研修に同様の方法を導入することがリフレクション教育に有用と考え,自己評価と対話によりリフレクションを促す集合研修(以下,本研修)を立案した。本研修の導入を提案したところ,看護管理者もリフレクションの重要性を認識していたこと,筆者が2006年度より新人看護師研修に協力してきたことから,スムーズに受け入れられ,2015年度より開始した。
当初は,講師が指導するかたちの全体討論をメインとし,その前段的役割としてスモールグループディスカッション(以下:SGD)を実施していた。しかし,新人看護師からSGDを拡充したいという希望が出されたため,2019年度からは参加者ほぼ全員とSGDが行えるように方法を変更し,全体討論の時間を縮小した。さらに2020年度には講師が指導することをやめて,SGDを中心とする企画とした。
あえて「指導」を行わず,新人看護師同士がお互いにフィードバックし合うスタイルの集合研修は,旧来とは異なるスタイルでの実践であり,チャレンジングな試みであったが,新人看護師に対しても指導者に対しても大きな成果が認められたので以下に報告する。
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