連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・144
奇想天外な絵本の神話的なリアリティ
柳田 邦男
pp.546-547
発行日 2018年6月10日
Published Date 2018/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686201009
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絵本ならではの表現の卓抜さ(奇抜さ?)あるいは面白さの一つは,ストーリーの結末のつけ方がおよそ常識の範囲を超えた意表を突く展開になっているところにある。常識を超えたというのは,こうすればこうなるといった因果関係あるいは論理性にとらわれている限りそんなことはあり得ない場面を,突拍子もなくいきなりポンと見せて終わりとするやり方だ。
落語の最後の“落ち”のようでもあるが,違う。“落ち”は,言葉の綾を活かしたりしてひとひねりのある決着のつけ方をして,聞き手に,庶民の涙もろさや正義感をくすぐって,「巧い!」という満足感を与える芸だ。もちろん絵本の中には,そういう“落ち”で締めくくる愉快なものもあるし,この欄でもそういう絵本を紹介したことがある。
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