特別記事 地域医療
地域における大学病院の役割―来る少子多死時代に向かって
荻野 美恵子
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1北里大学医学部 神経内科学
pp.401-405
発行日 2012年5月10日
Published Date 2012/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686102430
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今後の日本の医療状況
周知のように日本はこれまで世界のどこの国も経験したことのないスピードで少子高齢化が進んでいる。現在,日本の死亡者数は年間約100万人だが団塊の世代の死亡者数がピークを迎える2040(平成52)年前後には約170万人になる(図1)。すでにピークに達している過疎部と比べ,大都市周辺部の高齢化はこれから進むため,おそらく死亡者数も2倍近くになると予想される。これは,これまでの分析からも明らかなように,亡くなる前に投入する医療資源は甚大なため,医療も介護も現在の2倍近く必要となることを意味する。
国民皆保険が開始された昭和30年代は右肩上がりの経済状況とベビーブームでの人口増加を時代背景としていた。生産人口が多いということは,あまり病気にならない若者が多く,病気をもちやすい高齢者の割合が少ないという人口構成ということである。しかし,現在はそれが徐々に逆転しようとしており,支える経済力にも陰りが見えている。さらに追い打ちをかけるように東日本大震災もあった。これまで,問題を先送りにしてきたつけで,現在の日本国家の赤字はGDP比150%と膨大に膨れ上がり,その負債額は乳幼児まで含めて1人当たり800万円以上,1世帯あたり1700万円以上ともいわれている。インターネット上で日本の負債の増えていく様子を示しているホームページが複数あり,刻々と増える数字に日本の未来,次の世代への不安を抱く人は少なくない。
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