特集 医療体制の危機における看護の役割
医療変革に向けた提案―そのビジョンと行動
佐栁 進
1
1国立病院機構関門医療センター病院
pp.10-16
発行日 2010年1月10日
Published Date 2010/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101650
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はじめに
わが国の医療制度は,国民皆保険,自由医業制,医療機関へのフリーアクセスで特徴づけられ,今日にあっても世界最高の水準にある。しかしながら,医療法第一次改正(1985年)以来たびたびの制度改正で,超高齢化社会でも持続可能であるよう企図されながらも,そのシフトは決して順調に推移していない。特に新医師臨床研修制度の導入(2004年)から,医療崩壊の危機に瀕する事態が全国各地で見られた。これは単に新しい研修制度の導入によって俄かにもたらされたものではなく,確実に到来する超高齢化社会の波に,遅々として進まぬ医療変革が,徐々に飲み込まれつつある危機状態を映し出していると考えるべきである。今日のわが国医療を取り巻く逼迫した状況は,“火消し”の対症療法では十分でなく,医療サービスのあり方から根本的な医療変革が早急に必要である。
医療変革をどう進めるか,当事者である国民,医療者,大学,行政の四者それぞれの立場からさまざまな議論がされているが,やや乱暴な提案もある。本稿は,医療は国民のためにあるとの視点を基本として,当事者である四者すべてに受け入れられ,当事者努力で実現可能な医療変革のシナリオを提案する。また,その具体的なモデル展開について関門医療センター(以下,当センター)の取り組みを紹介する(写真1)。
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