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はじめに
医療機関における労働安全衛生課題としての暴言・暴力対策の優先度が高まっている1-3)。最近,病院内における患者から医療従事者への暴力,患者同士の暴力,看護師への暴言事例が頻発し,医療現場に「暴言・暴力」という課題が予想以上に潜んでいることが明らかになってきた。こうした課題は以前から存在していて,精神科領域などでは取り上げられてきたが2),一般診療に従事する医療従事者の多くは,仕事の一部としてそれを我慢してきたのが実情で,組織的な取り組みも多くはなかった3)。
しかし,現場の担当者や管理者,病院としての組織的な取り組みが進み,対策が急速に進みつつある。たとえば,暴言・暴力への対応方針作成,担当する組織づくり,ホワイトコードなどの発生時の適切なケース対応,クレームを業務改善に生かす取り組み,発生後の職員の心のケアを含むフォローアップ体制の整備などである。一方,その対策づくりがマニュアル整備のみに終わってしまい,なかなか定着できていないという声もある。
財団法人労働科学研究所では,内外の研究者とともに,医療現場で発生している暴言・暴力事例を共有し,良好対策事例から学び合う参加型研修を開催し4),また,その企画・立案に協力ができた5-6)。これらの研修は,今後の優先課題について整理することを目的に,医療機関の管理職・職員との共同作業のもと,対策づくりを支えることを目的としている。本稿では,医療従事者の安全と健康を支える労働安全衛生の立場から,暴言・暴力対策に取り組む意義,取り上げるべき対策内容,参加型で職場の他職種を巻き込みながらすすめていく手法とそのツールについて解説する。また稿中では研修に活用できるアクションチェックリスト(ACCESS-Hospitals: NA19/7,9,10 Action checklist for ensuring safety and security in hospitals,医療機関における安心で安全な医療労働環境づくりのための改善チェックリスト(医療外の緊急リスク対応))を紹介する。
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