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はじめに
医療技術の進歩,患者の高齢化,重症化に伴い,看護師の役割はますます複雑多様化してきている。さらに,看護基礎教育の変容なども関連し,新人看護師の能力はすでに報告されているように医療環境の変化に対応するニーズに応えられなくなってきている。
各施設では,新卒看護師の教育に多くの時間を費やし,努力している一方で,経験年数の比較的短いプリセプターに新卒看護師教育への責任や実際の業務が任され,教える側も教わる側も余裕のない状況で新卒看護師教育が行なわれているのが現状である。また,実際に新卒看護師あるいは経験の少ないスタッフによるインシデントやアクシデントが起きていることからも,安全が確保され,かつスタッフの負担の軽減ができるような,教育システムをつくることが急務であろう。
厚生労働省も,こうした臨床現場における卒後教育・看護基礎教育における現状と課題をうけて,新人看護師到達目標と指導指針を提示し,新卒看護師研修制度の必修化に向けて動き出している。
しかし,臨床の現場では,マンパワーの確保や教育体制の質的な問題から,研修制度を取り入れている施設はごくわずかである。また,新卒看護師の教育に関する報告は,厚生労働省などの調査や,各施設・教育機関からの報告など多数みられ,新卒看護師の教育方法・内容の実態や,新卒看護師の実践能力(技術の習得状況)の経時的な変化,基礎教育での教育のあり方などが述べられてきた。しかし,施設の教育方法・内容,新卒看護師の背景,実践能力の経時的な変化を合わせて検討したものは見当たらない。つまり,どのような教育体制でどのような教育方法をとれば,厚生労働省の提示した指針,研修制度を実践できるのか,具体的な方法はまだ明らかにされてはいないということである。
そこで,教育体制,教育方法・内容,新卒看護師の背景,技術習得の経時的な変化を明らかにすることを目的に,日本私立医科大学協会看護部長会議で実態調査を行なったので報告する。
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