連載 スクラブナース4年生・41
耳そうじ
鈴木 美穂
pp.935
発行日 2008年10月10日
Published Date 2008/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101331
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このところ健康診断の実習で100人ほどの耳を診てきて,意外と人の耳は汚いという新たな発見をした。耳鏡を覗くと,教科書に例示されているような鼓膜像が見えることはまれで,たいていはその手前に耳垢が大きな壁として立ちはだかっている。教科書に耳垢塞栓が難聴の原因の一つだと記述されていても「まさか耳垢で」といまひとつ信じられなかったのだが,実際に耳垢が外耳道を完全に塞いでしまっている人がかなりいる。「聞こえにくくないですか」と聞くと,「そういわれてみれば,こっち(右)から話してもらわないとよく聞こえない」と無症状でなかったり,「どうしてわかるの?」と耳垢塞栓のあるほうの耳の閉塞感をすでに自覚していたりする。私が診た人々の約半数は医療保険に加入していないかメディケイド(低所得者保険)だったが,その経済状態が耳の清潔に影響しているのだろうか。あるいは衛生観念によるのだろうか。
耳垢は英語でear wax(cerumen)といわれるように,欧米人にはウェットタイプの人が多い。実際,私が診たのはほとんどがウェットタイプであり,日本を含む東アジアの人々に多いドライタイプの人にはこれまでで1人しか出会っていない。ウェットタイプの耳垢はドライタイプに比べて耳そうじが厄介なようで,なかには自分は耳垢の分泌が多く粘稠性が強いほうだから耳そうじはいつも耳鼻科を受診するという人もいた。
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