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はじめに
褥瘡はかつて「看護の恥」と言われ,故に看護師が中心になり,予防でも治療上でも大きな役割を果たしてきた。時代は移り,創傷を湿潤環境で治す新しい創傷治癒理論が広がり,1999(平成11)年には日本褥瘡学会の創設など,褥瘡を取り巻く環境は大きく変わってきた。
診療報酬では,2002(平成14)年に褥瘡対策未実施減算が導入され,褥瘡対策チームの設置と,全入院患者の褥瘡発生リスク判定と対策が義務付けられ,褥瘡対策に関する診療計画書が作成されるようになった。2004(平成16)年にはハイリスク患者への診療報酬の加算も始まった。2006(平成18)年4月から未実施減算が廃止され,現在,褥瘡対策は入院基本料の施設基準となっている。また,褥瘡ハイリスクケア加算が新設され,処置料算定基準にも変更があった。このように,褥瘡は看護職単独の「恥」から,チーム医療の「質」を評価すべきものへと変化した。
褥瘡は第一に予防が大切で,ひとたび発生すると治療には多大な労力と時間を費やし,コストもかかる。患者自身の苦痛も強く,リハビリテーションの進行や栄養状態にも障害を及ぼしてくる。入院期間の短縮が必要とされるなかで,褥瘡の発生は退院を難しくし,遠ざけることは確実であり,褥瘡の予防だけでなく治療できる環境を構築,維持,発展させていくことが皮膚・排泄ケア認定看護師に求められている。病気でやむを得ず入院する患者にとって,生活の場となる病院における大切なキーワードは「安全と安楽」であろう。世の中の変化によって生活習慣が変わるように,病院のベッドに求められる機能も変わり続ける。
本稿では,「ベッド周りの環境をどう整えるか」をテーマに,聖隷三方原病院(以下,当院)での取り組みを紹介する。
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