特別記事
判断の難しい状況における看護師の行動を決める背景―「Moral certainty」の概念による分析
中嶋 尚子
1
,
小西 恵美子
1
1長野県看護大学生活援助学講座
pp.298-303
発行日 2003年4月10日
Published Date 2003/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100815
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はじめに
医療技術の目覚しい進歩は,人々の命を飛躍的に延ばした。しかし反面,終末期の生き方や死に方の選択など,生と死をめぐる多くの倫理的課題を医療現場と社会に提起した。さらに,人口の高齢化によって医療費はますます増大し,医療技術を駆使して延ばす命の意味は,経済的側面からも議論されている。
そのような状況の中,看護師は終末期ケアの場面で判断の難しいさまざまな問題に直面する。医師の指示,患者・家族の希望,そして患者の状態の間で,看護師はどのように行動したらいいかと迷うことが多い。しかし迷いながらも,看護師は何らかの行動をとらなければならない。その行動が患者の生と死の質に直接つながるものなのか,あるいは医師や家族の意向のままに行動したものなのか,そこに看護師の自分の仕事に対する意識が反映される。その意識は,その状況に置かれた時,その看護師にとって何が大切なのか,という価値観に結びついている。
本稿では,患者の命に直接つながる水と栄養の提供が,看護師の重要なケアであることに着目して,終末期患者が口から栄養がとれなくなった時に,人工的に水分と栄養の補給を行なうか,やめるかという状況(以下,意思決定状況とする)を選び,その状況での看護師の行動と背景を探求した研究に基づくものである。
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