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はじめに
現在,わが国の病院における看護要員配置の多くは,診療報酬の入院基本料や夜間勤務等看護加算の要件を基準に決められている。すなわち,患者ニーズに基づいて安全で質の高い看護を提供できる看護人員数という視点で算定しているのではなく,個々の病院の経営事情や経営方針によって決められている実情を示している1)。特に夜勤帯においては昼と比較して,看護師1人当たりの受け持ち患者数が大幅に増え,患者の安全を確保することに看護師個人の責任が大きく問われている。
ペンシルバニア大学のL. H. Aikenは,その研究結果から,看護人員不足は患者の生命に関わると述べている2)。また,Aikenは,米国における看護師の疲労状態を懸念しており,そのような疲労状態では,死亡に至るような合併症も見逃す可能性があり,また,過重労働は,看護師のバーンアウト(燃え尽き症候群)を招くとも述べている。米国の平均在院日数は約5日であるので,日本と比較すると,患者の重症度は非常に高い。
しかし,日本においても,診療報酬改定のたびに急性期病院の在院日数要件が短縮され,入院患者の重症度が高くなることが予測される。そのため,看護の労働のあり方と,患者安全のための側面から,夜間の適正な看護人員配置について,そのあり方を検討する必要があると思われる。
しかし,過去5年間の原著論文を見ても,日本での夜勤業務に関する研究は,看護師の疲労等身体状況と交替制に関する研究がほとんどであり3~6),一般病棟での人員配置のあり方やそれに関連した患者安全を題材とするものは見られない。
そこで,看護人員配置数と労働状況の関係性について検討することを目的として,夜勤勤務者の人数を意図的に増員させ,業務内容の変化および業務時間,超過勤務時間,休憩時間の変化を調査し,示唆を得たので報告する。
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