連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・23
孤独な心に生きる灯が…―『あかいハリネズミ』『たびだちのとき』
柳田 邦男
pp.468-469
発行日 2007年5月10日
Published Date 2007/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100615
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子どもの心の成長をうながすものは,何だろうか。その問題を考えることが,今ほど大事な時代はないように思う。今の子どもたちは,ゲームやケータイやネットといった情報機器に囲まれているため,生身の人間同士の触れ合いによって,感情のきめ細かい分化発達が進んだり,他者とのコミュニケーションの取り方が自然に育ってきたりする機会が乏しくなっているからだ。
よく考えてみると,この危機は,実は子どもだけの問題ではない。青年や中高年の大人にとっても,共通に存在している課題なのだ。愛する人を喪ったり,仕事がうまくいかなくなったり,人間関係が壊れたりといった事態に直面した時,そういう人生の難局をどう乗り越えるか,どう自分の心の安定を取り戻して,前向きに生きられるようになるか。誰しも,しばしば直面することだ。
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