連載 使いみちのない時間・16
別れ
丈久 了子
pp.314-317
発行日 2001年4月10日
Published Date 2001/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902426
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「今日は私のために,わざわざ集まってくれてありがとう。じゃ,みんなに乾杯!」
促されて,吉田はワイングラスの脚を持ち,軽くテーブルの上に差し出した。昼間は喫茶店の店内が,夜には落ち着いたカクテルバーになっている。その片隅で,テーブルを囲む残りの3人もグラスを軽く打ち合わせた。薄い氷の割れるような音が,グラスのワインのさざめきを隠した。
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