連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・7
窓の外の世界 四季の変化と風と 『わたしの庭』『風さん』
柳田 邦男
1
1作家
pp.944-945
発行日 2005年11月10日
Published Date 2005/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100264
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あのいまわしい第2次大戦中のこと,ナチス・ドイツがユダヤ人絶滅のために各地に建設した強制収容所のひとつ・アウシュヴィッツのバラックの中につくられた病棟に,病み衰えた一人の若い女性が死を待つばかりの状態になっていた。ところが,なぜか彼女の目は生き生きしていた。
不思議に思った同じ収容された身の精神医学者,ヴィクトール・E・フランクルが,彼女にどうしてそんなに明るくしていられるのか尋ねた。すると彼女はバラックの小さな窓の外を指して,「あそこにある樹はひとりぽっちの私のただ一つのお友達ですの」と言った。フランクルがかがんで彼女の顔のところから窓の外を見ると,花をつけた一本のマロニエの樹の枝が見えた。
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