連載 私のこだわり看護管理 パート2 〈看護現場学〉クオリア創造に向けて・6
IV章:看護実践論 エキスパートへの道
陣田 泰子
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1聖マリアンナ医科大学病院看護部
pp.500-501
発行日 2005年6月10日
Published Date 2005/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100188
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医師とナースの行為の本質的な違い
診断と治療を業務とする医師の行為とケアをする看護の違いは何か。一つは概念化(抽象化)アプローチと帰納的アプローチの違いにみることができる。前述した私の看護経験を例に2つのアプローチについて考えてみる。
「人工呼吸器装着の際の自己決定」という概念で考えてみよう。昭和50年代はじめ「自己決定」なんて言葉すら知らなかった。事前の話し合い通りに進行していたら,人工呼吸器を装着していなかったかも知れなかったのである。しかし,医師は葛藤した末,患者との約束を破って人工呼吸器を装着した。約束・ルールからのアプローチは演繹的である。家族と医師との話し合いの結果,「装着しない」というルールを作って患者に適応したのであるが,自分たちの作ったルールを破って呼吸器をつけた。看護師は呼吸器装着のあとは24時間,365日ケアをし続けるのである。この過程は帰納的アプローチである。医師は,検査結果を異常か否かを診断し,その結果にしたがって患者をみていく,まさに診療プロセスは演繹的過程である。それに対して看護は診断の下された患者の生活を整えながら,患者の毎日に付き合っていくプロセスを踏むのである。両者があってこそ,患者への人的(全人的)アプローチとなるのであろう。
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