調査報告
看護学生から看護師への共感性の発達—(第1報)共感尺度得点からの検討
林 智子
1
,
河合 優年
2
1岡崎女子短期大学
2武庫川女子大学
pp.453-460
発行日 2002年10月15日
Published Date 2002/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900694
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はじめに
心理学では共感の研究が盛んに行なわれており,主体が客体と同じ感情になるという感情面を強調する受動的観点と,主体が客体の立場に立つという認知面を強調する能動的観点に分けて研究が行なわれてきた。このようななかで,共感を多面的にとらえる包括的な研究の必要性が高まり,Hoffman(1979/1981)は,共感を認知的な役割取得,他人の苦痛からもたらされる個人的苦痛の感覚,そして他人についての同情あるいは配慮の感覚というものを含む構成概念として示している。また,心理臨床の領域では,Rogers(1957)が人格変容のための必要十分条件の1つとして「治療者の共感的理解」をあげ,Kohut(1959/1987)が他者の内的状態を理解する方法を「代理の内省」あるいは「共感」として取り上げて以降,セラピストの共感あるいは共感的理解が治療過程や結果に及ぼす影響について検証されてきている。
看護にとっても共感は重要な概念であると考えられ,患者-看護者関係を説明する場面で頻繁に使われている。しかしその一方で,共感という現象は言語化しづらいものであるため,共感について看護職者のなかで共通の認識ができているかは明らかでない。このようななかで,看護職者の共感に関連した研究はいくつか行なわれている。Zderadら(1969/1986)は心理臨床の流れを汲む共感的看護として,臨床的共感の段階的構造について理論化している。
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