焦点 尿失禁患者の看護に関する研究
解説
尿失禁をもつ人への行動科学的アプローチ—行動療法に焦点をあてて
小松 浩子
1
1聖路加看護大学
pp.355-365
発行日 1996年10月15日
Published Date 1996/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900359
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はじめに
人間にとって排尿は,生理的ニーズであるとともに,社会的な営みであるとも言える。幼児期のトイレットトレーニングを経て,人は社会生活に支障を来さないような生活習慣として排尿行動を身につける。すなわち,プライバシーの保てる特定の環境下においてのみ排尿を試み,またその頻度やタイミングはその人の生活に支障のない範囲に調整されている。健康な生活を送っている大多数の人にとっては,排尿行動は日常茶飯のこととして行なわれており,とりたてて努力を要するものではない。
尿失禁は,このような排尿行動の過程のいずれかに変調か障害が生じ,その結果として先に述べたような尿禁制(その人のおかれている環境下において適切に排尿のコントロールがとれている状態,すなわち,したい時に,あるいはして良い時に円滑にタイミングよく排尿できていること)が維持できない状態をいう。尿失禁により尿禁制を保てない状況は,身体的な不快や苦痛をもたらすばかりでなく,それまでに何気なく行なってきた排尿行動の円滑な維持が困難となり,その結果として日常生活へさまさまな影響をもたらす。
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