特集 国際シンポジウム「家族看護学研究の動向:患者と家族のQOLの向上と看護の充実をめざして」
第II部 成人・老人看護における家族看護学研究の動向
基調講演・2:高齢社会における家族看護学研究の課題
鈴木 和子
1
1千葉大学看護学部家族看護学講座
pp.149-156
発行日 1994年6月15日
Published Date 1994/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900189
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日本の家族の特性
前のWhall先生のご講演でも,このシンポシウムを看護における異文化理解の機会にしたいと述べられていました。また前のシンポシウムでも日本の家族関係の特徴が討議の焦点となっていましたので,私も最初に,簡単に国際的に見た場合の日本の「家族」の歴史的,文化的特異性についてふれてみたいと思います。また同時に,それが家族看護学研究とどのような関連性があるかについても考えてみたいと思います。
歴史的に見て,日本の家族のあり方に決定的な影響を与えたものに,明治時代に制定され,戦後廃止された旧民法の「家」制度があります。明治31年に施行された旧民法の親族および相続に関する規定における「家」の定義は,「家督相続によって引き継がれてゆく戸主権をもつ戸主によって統率される家族集団」であり,ここでは戸主である,主として父親が財産管理や家族の存続と統制に絶対的権力をもち,「家1を継ぐ長男を通じて代々,その権力が委譲されていきました。この民法のもとでは,家族の自由は著しく制限され,親子関係も自然の愛情よりも権威的な上下関係が強調されたものであり,半ば強制的な[親孝行」が国家への忠義心につながるものとして育成されました。
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