特集 看護における質的研究—質的研究で看護の何が見えるのか 聖路加看護大学公開講座委員会編
第4章
看護における質的研究:現状についての考察
Barbara Bowers
pp.347-360
発行日 1993年6月15日
Published Date 1993/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900149
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1.精通した研究者が少なかった近年
質的研究の現状について皆様にお話しする内容を検討しておりました時に,私のキャリアのこの数年問を振り返ってみることを致しました.その際,この数年間に看護学の研究分野において,いかに多くの劇的な変化があったかということを思い出しました.そして,看護学の研究分野における重要な変革に私自身が関与したということは,いかにエキサイティングであり,また同時にいかに消耗してしまうほど疲れるものだったかということも思い出しました.
また,1984年に私が初めてウィスコンシン大学に着任した時のことを思い出しました.その時私は看護学部でただ1人だけグラウンデッド・セオリーを研究する研究者だということがわかり,また実際私は大学のキャンパス全体でもグラウンデッド・セオリーを研究する唯一の研究者でした.そして今日,この4千人の教職員の中で2人がグラウンデッド・セオリーの研究者となりました.これだけの人数のいるキャンパスで他に誰もこのような研究をしている人がいないということを知り,私はショックを受けました.研究のアイデアとか,考えていることを分かち合う同僚がいなかったわけです.もちろんこの質的研究に関しては,他の教職員も非常にサポートしてくださったのですが,それでも,こうした形の研究をする者が私1人だということで,とても孤独感を抱きました.というのは,このような方法をさらに進展させていくのは,継続した対話や討論をしていくことにあるということが言えるからです.
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