焦点 看護におけるQOLの研究[2]
原著論文
化学療法を受けるがん患者のセルフケア—生活の制限と工夫および療養生活のコントロールとの関連
小迫 冨美恵
1
1元:聖路加看護大学大学院看護研究科
pp.234-248
発行日 1992年6月15日
Published Date 1992/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900081
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はじめに
がんは1981年には死因の第1位となり,がんに罹患している患者数は,225万8千人と推計されている。そのうら人院患者は127万7千人,外来患者は98万1千人である。がんによる死亡は年間約20万人であり,全死亡の4人に1人を占めており,壮年層の30-40%はがんによって死亡している。これに対して,政府は対がん10か年総合戦略を策定し,がんの本体解明,治療法の開発をめさし,研究を推進しているが,がんの原因究明の途上で,いまだ決定的な根本治療はなく,進行がんに対しては対症療法となることが多い状況である1)。厚生省にも末期がんケア対策諮問委員会が結成され,治療だけでなくがん患者の生活の質に対する関心が高まっている2)。
がんの治療法は,手術,化学療法,放射線療法,温熱療法,免疫療法,等多岐にわたる。なかでも化学療法は薬剤の種類,投与方法もさまざまで最近では短期入院のシステムをとって1日から3日の間に化学療法を行なったり,外来で継続治療をするケースが増えている3)。完全寛解率はまだ低く,患者は繰返し何度も入退院をしながら治療を続ける必要があり,患者はがんそのものの症状に加えて治療に伴う生活制限や,社会的関係の変化に対応して生活しなければならない。
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