- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
多領域を横断する学問的探究とは,すでに確立された学問分野との絶え間ない相互作用の中で進められるものである。また,それぞれの学問分野においては常に学際性が存在する(研究者や学者が,他領域の理論や概念を自ら取り入れることで革新的な前進を図るということがよくある)。しかし,真に学際的な領域は,既存の一領域では対処することができない社会的または地球的な問題に取り組むという差し迫った必要が生じたときに現れる。このことはhealth humanitiesにもあてはまる。パンデミック,認知症,精神疾患といった対応の困難な感染症や慢性疾患から,さらには気候,インフラ,社会的・経済的状況まで,健康を左右する社会的要因への認識の高まりという点で,健康とヘルスケアは,これまで認識されていたよりもはるかに幅広いステークホルダーが関与せざるを得ない研究,教育,実践の場となっている。Health humanitiesは,個人,コミュニティ,すべての人々の健康とウェルビーイング(well-being)の維持および向上に関わる他のあらゆる分野および専門家と協力,協働することをめざす。Health humanitiesとは,それらを間接的または直接的な方法で行うものである。まず,1)間接的には,人文学やアートに基づいた教育的見地と手法をヘルスケア従事者の教育(および健康関連のテーマに関する研究)に取り入れることによって,また,2)直接的には,非医学的な,アートを中心とする,ワークショップ形式の,地域コミュニティにおける活動を導入することによって健康教育,疾病予防,ならびに患者・医療者・非専門的な介護者のメンタルヘルスとウェルビーイングの向上をめざす。
本稿の目的は,medical humanitiesとhealth humanitiesの最近の動向を示し,今後の展望について論ずることである。
Copyright © 2022, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.