特集 イノベーション研究を始めよう—テクノロジーが拓く看護ケアの可能性
テクノロジーの活用の実際(高齢療養者の痒みと睡眠障害)
高齢療養者の痒みの評価と夜間睡眠との関連からケアのあり方を考える
樋口 明里
1
1京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻博士後期課程
pp.362-367
発行日 2022年8月15日
Published Date 2022/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681202008
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研究に取り組むまでの背景
筆者は10年ほど前から,老年看護の臨床現場において先進的テクノロジーを導入し,高齢療養者の抱える症状を客観的に評価するプロジェクトに携わってきた。具体的には,ICタグを用いた認知症患者の徘徊・行動パターンの評価(樋上ら,2013)や,非装着型の体動計を用いた睡眠覚醒リズムの評価(Yamakawa, Higami, & Makimoto, 2013)などである。
これらのプロジェクトが実施された当初は,まだ電子カルテの導入がようやく慢性期病院にも普及し活用されるようになったころであったため,その他の計測器などについてはあまり広く周知されておらず,試行錯誤で進めなくてはならない点も多く,いま以上に苦労することも多かった。それでも,これまで主にスタッフの観察や感覚によって認識されてきた現象を客観的データで評価することにより,認知症高齢者へのケアにつながったという事例を通して,臨床現場におけるテクノロジーの活用の必要性を強く感じたことを覚えている。
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