焦点 患者の精神生活にどこまでかかわるか・4
レポート
看護とtoolの問題
吉田 伸子
1
1千葉大学教育学部看護教員養成課程
pp.294-304
発行日 1977年7月15日
Published Date 1977/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200521
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I はじめに
何らかの意味をもってひとを把えようとする方法は主に心理学の歴史の中で発達してきた。またそれを基盤として他の専門分野においてもたとえば教育学では教育の対象を把えるために教育心理学が,社会学では社会の集団や個人の特性をさまざまな角度から把えるために社会心理学がというように急速かつ多様な発展をみている。
私達は日常の看護活動での対象把握のほとんどを身体的側面は別として直観と常識にたよっている。性格の定義に"生活過程のなかに生じてくる,あらゆる情動的,意志的反応可能の総体"というのがあるが,まさに看護者は対象の生活過程のただ中で対象と対峙して反応や意志をぶつけ合って活動を展開しているのであり,看護者が対象である"一人の人間"を把握しているといった場合,そのひとの行動特性をよくふまえた信憑性の高いものであるといって良いと思う。
しかし看護が独自の目的と方法をもって対象に対しての看護活動を展開しようとするのであれば対象の心理的特性を把える方法においても主観のみにたよるのでなく,客観的なできうれば看護独自の手だてが必要となるであろう。看護者が独自な心理学的方法で対象の心理特性や類型を引き出して,どんな心理的特性をもつ患者にどんな問題が起こりやすいか,同じ問題や状況のもとでの反応のちがいはどうか等の判断や予測が可能となるならば看護学の発展にも多大な益をもたらすことになると考える。
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