特集 看護学における事例研究法─新たな研究デザインへの可能性
扉
黒江 ゆり子
1,2
,
木下 幸代
3
1岐阜県立看護大学
2岐阜県立看護大学大学院
3聖隷クリストファー大学看護学部
pp.116
発行日 2013年4月15日
Published Date 2013/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100756
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看護学は看護実践を基盤として成り立つ学問であることから,専門職者として1人ひとりが成熟するためには,対象に関する事象を看護学的にどのように捉え判断したのか,その判断に基づき,どのような看護が提供されたのか,そして対象にとっての看護の効果は何であったのか等について,綿密なデータに基づいて分析し,実践知として積み重ねていくことがきわめて重要となる。なぜなら,看護学を基盤として創生されるケアは,個々の対象のために個々の状況に応じて考案されるからこそ高い価値があるからである。そうしたケアを考案し行なうことは,看護専門職者としての責務の1つでもあろう。
しかしながら,1970年代までわが国の看護学において貴重な手法とされてきた事例研究法は,1980年代以降の量的研究法,質的研究法,および混合研究法(mixed-methods)など多様な研究が可能になる大きな流れのなかで,その存在意義を明確に示すことができないままに今日を迎えていることも事実である。看護実践の重要な基盤の1つは,保健医療利用者のニーズであり,かつ,利用者ニーズを生活者のニーズとして捉えることの重要性については年々認識が深まっている一方で,事例研究の重要性に看護職者の1人ひとりが気づきながら,その具体的なイメージを創造することができないという葛藤の中にいる。私たちは何か大きな忘れものをしているのかもしれない。
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