特集 経験を記述する 現象学と質的研究
緩和ケア病棟における看取り―死の直後の実践経験
守田 美奈子
1
1日本赤十字看護大学
キーワード:
緩和ケア
,
看取り
,
実践経験
,
家族
,
死後のケア
Keyword:
緩和ケア
,
看取り
,
実践経験
,
家族
,
死後のケア
pp.346-355
発行日 2012年7月15日
Published Date 2012/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100669
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問題の所在
人は病いをもち死に瀕することで,肉体的な苦痛や不安,恐怖,あるいは生きる意味を問う苦悩などを体験する。病いに伴うこのような苦しみ,いわゆる全人的苦痛を緩和すること─それが緩和ケアの理念である。1960年代に誕生したホスピスケアの思想を受けつぎ,1970年代に誕生したこの概念は,現在は世界に広まり医療の重要な柱として位置づけられている。日本においても,2007年に施行されたがん対策基本法により,さらに医療現場に浸透しつつある。今日では,緩和医療の知識や技術は著しい進歩を遂げている。
しかし,人の苦悩を全人的なものとして捉え,それを緩和するという緩和ケア本来の目的を考えると,その実現は容易ではない。患者,家族それぞれが抱える苦痛は,固有の価値観や関係性,生活や生きた歴史などが深く絡み合い,現在の苦しみとして経験されるので,1人ひとりの文脈に即したケアが求められるからである。
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