焦点 看護学におけるTranslational Research─振動による褥瘡の治療促進をめざした機器開発・検証のプロセス
【仮説の検証】
振動による血流促進効果の検討―健常人を対象とした実験
仲上 豪二朗
1
,
浦崎 雅也
2
,
北川 敦子
3
,
真田 弘美
1
1東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻老年看護学/創傷看護学分野
2前・東京大学大学院医学研究科健康科学・看護学専攻老年看護学/創傷看護学分野
3金沢大学医薬保健研究域附属健康増進科学センター
キーワード:
技術開発
,
実験研究
,
超音波装置
,
血流
,
振動
Keyword:
技術開発
,
実験研究
,
超音波装置
,
血流
,
振動
pp.459-464
発行日 2010年10月15日
Published Date 2010/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100473
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シーズを形にする
前稿で,振動がマウスの微小循環血流量を増加させ,そのメカニズムにはNOが関与していることが明らかになった。つまり,振動を皮膚に伝えることでメカニカルストレスが発生し,血管内皮細胞からのNO産生を促進することで,皮膚血流を増大させる可能性が示唆された。このことは,振動を血流増進の手段として使用することの明確な科学的根拠となる。そこで,この振動をどのように人に伝えるかが次の課題となった。振動というシーズはあるものの,それを機器として実現するにはどのようはコンセプトが必要か,私たちは思案した。いくらニーズが明確になり,それに対するシーズも固まり,さらにその効果が実験室レベルで検証され,実証されても,それを臨床に還す手段がなければ医療の発展はない。
開発の上で最も留意したことは,体圧による血管閉塞をなるべく抑制しながら血流促進をいかに行なうかであった。つまり,体圧分散マットレスとの関係をどのように考えて患者へのインターフェイスを決定するかが最大の焦点となった。考案にはベッド全体を振動させるアイディアなどさまざまな紆余曲折があったが,最終的には現在の量産品(リラウェーブ,マツダマイクロニクス)のように,持ち運び可能であり,体圧分散マットレスの直下に差し込み可能な形となった。このことにより,1台で複数の患者に適応でき,かつマットレスの本来もつ体圧分散機能を損ねることなく血流増加を期待できると予測された。
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