焦点 看護学におけるTranslational Research─振動による褥瘡の治療促進をめざした機器開発・検証のプロセス
扉
真田 弘美
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1東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻老年看護学/創傷看護学分野
pp.432-433
発行日 2010年10月15日
Published Date 2010/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100469
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看護学の研究成果は社会をどのように変えてきたであろうか。20年前,30年前と比べて,臨床をどのようによくしてきたであろうか。研究を論文として公表することが研究者としての重要な使命であるが,その成果を社会に還元することがどれほど難しいかを研究者は理解している。そのような苦悩が,1つの研究枠組みで解消されつつある。それがTranslational Researchである。もともとは創薬の分野で使われはじめた言葉であるが,広い意味で,「基礎研究の成果を臨床へ役立てるための翻訳的な研究過程」と捉えている。「基礎固め」を確実に行ない,そこから生み出される,一般社会には理解が難しい言語で構成された新しい技術や知識を,実社会で役立たせるための翻訳作業が看護学の領域にも流入してきている。
この企画で強調したいことは2点ある。日本の看護学の研究には,疫学的アプローチを用いた観察研究によるニーズの把握や,質的研究方法を用いた現象の言語化が多いが,メカニズムを解明する基礎研究や技術の臨床評価研究は非常に少ない。つまり,Translational Researchの手法は,現象の把握にとどまることなく,新しい技術の開発と臨床評価までの研究プロセスとして,看護学の領域に必要欠くべからざるものである。日本のすばらしい看護技術を社会に発信するにはこの手法が最も効果的であり,次世代育成の土壌ともなる。
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