焦点 看護研究におけるアフォーダンスの可能性
看護技術の習得・熟練におけるアフォーダンス―ナースと看護学生の「アンプルカット」を題材に
吉田 みつ子
1
1日本赤十字看護大学
キーワード:
アフォーダンス
,
看護技術
,
看護教育
Keyword:
アフォーダンス
,
看護技術
,
看護教育
pp.531-538
発行日 2008年12月15日
Published Date 2008/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100344
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ナースの技をどのように説明し,伝えるか
ナースは,吸引チューブの先端を通じて自身の身体に伝わる気管や痰の溜まり具合をどのように捉えているのだろうか。この種の問いに答えうる看護研究は少ない。テキストにはチューブの挿入の長さや角度が,解剖図とともに明記されているだけであり,ナースは仲間同士で,吸引チューブの進め方の感触を語ったり,先輩ナースの手つきをまねながら,技や感覚を自分のものにしていっている。
このように,言語化されないが,確かな実感としてナースが身体に蓄積している知識・技術がどのように獲得されていくのかという問いに対して,「ハビトス」という概念からのアプローチがある。「ハビトス」とは,文脈がみえず,単なる操作(「形」)の部分的模倣であった行為が幾度も繰り返されるうちに,「形」の意味や目的についての解釈が生まれ,当初ばらばらだった「形」が1つの「型」にまとまっていく認知的過程を説明する概念である(生田,1987)。ハビトスという概念から技術の熟練化をみると,看護の行為が幾度も繰り返されるうちに,学習者の身体が実際の道具や患者などに触れ,意味をもたぬ感覚や身体の動きを知覚しながら,「解釈の努力」によって自分にとっての意味ある感覚を得て,自らの主体的な動きに変化を遂げ(生田,1987),熟練した行為になると捉えられる。
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