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はじめに
家族介護者を理解するための質的研究の取り組みは,これまでそれぞれの領域における多様な文脈,背景をもとに数多く行なわれ,蓄積されてきた。しかし,それぞれの領域でなされた研究の知見を統合するという取り組みは,いまだ進んでいないのが現状である。
そこで今回筆者らは,NoblitとHare(1988)およびPatersonら(Paterson, Thorne, Canam, & Jillings, 2001)の手法を参考に,家族介護者に関する研究知見のメタ統合を試みた。統合の目的は,①老年,精神,成人という領域を横断してみられる,日本人家族介護者の看護ニーズを把握すること,②家族による介護への対処法の習得に焦点を当てた,看護実践に結びつく包括的な概念をつくりだすこと,の2点である。個々の論文で対象となった家族が,介護への対処法をどのように習得しているのか,領域を超えてみられる共通性は何か,介護者のとる対処の多様性を産む要因は何か,などについての理解を深めることをめざした。
メタ統合の対象となった論文(「一次論文」と称する)は,千葉大学大学院看護学研究科における博士前期,博士後期課程の学位論文のなかから選び出した,在宅療養者を介護する家族を対象とした13の質的研究である。個々の論文で導かれた概念などの知見と,それらの知見を抽出する背景となったデータ(事例)をもとに,それらを横断する新たな概念をつくり,構造化して,多様性を産む要因を検討した。さらに,その検討をもとに,日本人介護者としての特徴や,領域を超えた家族介護の特徴,それらを尊重した看護援助について考察した。今回は「家族介護者はどのように介護への対処法を習得するか」という側面に焦点を当て,介護者の対処法を促進するための援助方法および今後の課題を考察した。ここでは,私たちが試みたメタ統合のプロセスとその成果の概要を報告する。
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