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はじめに
Nursing Work Index(NWI)は,米国においてマグネット・ホスピタルの特徴を反映して開発され(Kramer & Hafner, 1989),その後Nursing Work Index-Revised(NWI-R)として改訂されたことは,前稿の通りである。Aiken & Patrician (2000)によると,NWI-Rが初めて使われたのは,Medicareの死亡率に関する研究(Aiken, Smith & Lake, 1994)である。その後,NWI-Rは,リンダ・エイケン(Linda H. Aiken)氏をリーダーとするリサーチユニットにおいて,看護師の労働環境のみならず,患者のアウトカムなどに関連したさまざまな研究に使用されている(Aiken, Havens, & Sloane, 2000;Aiken, Sloane, & Lake, 1997;Aiken & Sloane, 1997;Aiken, Sochalaske, & Lake, 1997;Aiken et al., 2001)。このNWI-Rを使用した看護実践環境およびヘルスケアアウトカムに関するエイケン氏らの研究が世界的に普及し,同様の研究が世界16か国で行なわれている(Aiken, 2007)。
その最初の成果としては,看護師の労働環境の国際比較として5か国(米国,カナダ,イングランド,スコットランド,ドイツ)の結果が紹介され(Aiken et al., 2001),本焦点においても日本の結果を追加して紹介している(本号,pp.5-16)。
Aiken & Patrician(2000)は,NWI-Rに関して,専門職としての看護実践環境の特質を測定するツールとして,3つの下位尺度(「自律」「労働環境に関するコントロール」「看護師-医師関係」)を概念的に特定した。さらにそれら3つの下位尺度に含まれる項目から10項目を選定し,4番目の下位尺度である「組織のサポート」として紹介した。
ツール開発に関しては,Lake(2002)がNWIをもとに「実践環境尺度(Practice Environment Scale;PES)」を開発した。PESは,NWIから選出した31項目から構成されており,5つの下位尺度が特定されている。これら米国の研究に対して,カナダの研究者が,自国での調査データを用いてNWI-Rの因子分析を行なったが,Aiken & Patrician(2000)やLake(2002)が報告している4つまたは5つの下位尺度を特定することはできなかった(Estabrooks et al.,2002)。
本稿では,日本における調査結果(N=5956)からNWI-Rの回答に欠損値のない4740名の回答を有効回答とし,NWI-Rの因子分析を行なった結果を先行研究と比較させることにより,日本の看護師の労働環境を測定するツールとして,NWI-Rの妥当性について考察する。
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