レポート
赤ちゃんの頭のケガにご用心!
藤原 一枝
1
,
西本 博
2
1藤原QOL研究所
2竹の塚脳神経リハビリテーション病院
pp.644-649
発行日 2022年12月25日
Published Date 2022/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665202087
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はじめに
赤ちゃんを育てる環境は人的にも住居的にも社会的にもずいぶん変わりましたが,「赤ちゃんの頭のケガ」に限れば,その内容はほとんど変わっていません。
事故原因は,赤ちゃんの居住する家庭内での「ベッドやソファからの落下」と「自ら動き始めての転倒」が主体です。ネグレクトではなく,ほとんどは保護者のちょっとした不注意から起こっています。なお,この年代の救急車出動率は年ごとに増えていて,うち1割が入院を要しています1)。
幼弱な脳への放射線照射は避けたいので,救急外来でのCT検査は症状をみて,医師が厳密に選択し,診断や治療に進みます。この過程はCT検査が導入された1975年以降全く変わりません。
ところが,2000年頃から日本でも児童虐待の概念が普及し,とりわけ虐待のカテゴリーにあるSBS(乳児揺さぶられ症候群)やAHT(虐待による頭部外傷)に特徴的とされた「急性硬膜下血腫や眼底出血などを伴った症例」については,「虐待を見逃さない」「チャイルドファースト」のかけ声の下,院内虐待予防委員会を経て通告があると,児童相談所が虐待の有無を調査・判定し,疑いがあると「一時保護(親子分離)」するシステムになっています。
そこで,一点は助産師さんに限らず小児医療に関わる専門職でもめったに経験しないような症状や所見が「ありうること」を正確に知っていただきたいこと,もう一点は「虐待と誤解されて理不尽な親子分離に遭うことがあること」を知っていただきたく,本稿では3つの症例を紹介します。
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