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はじめに
日本の合計特殊出生率は2005年に1.26と過去最低になり,その後2013年1.43,2014年1.42,2015年1.45と推移している。欧米諸国のうちフランス,イギリスは,近年緩やかに上昇し,欧米諸国7カ国で比較するとフランスは高率であるのに対し,日本とイタリアは低率となっている1)。
筆者が数年前にイタリアの病院を見学した際,助産師が妊産褥婦とその家族と対話している場面が多く見られ,特に対象者に妊娠期から分娩の過ごし方や退院後の育児等について助産師が全て説明するのではなく,母親自身が考え,乗り越えることができるように関わっていたことがとても印象的であった。さらに助産師の業務が整理,分担され,とてもスピーディーに仕事を終えていることに驚きを感じた。
今回,合計特殊出生率において日本と近い値であるイタリアにおける病院の助産師の業務や役割,環境や助産師教育等,日本とイタリアとの相違点から病院における助産師の活動について示唆を得ることを目的とし,2018年3月26〜30日の間Presidio Ospedale San Paolo(以下,サンパオロ病院)産科病棟の見学を行ったので報告する(文中に使用しているデータは,全て2018年3月時点のものである)。
◆病院見学実習までの経緯と日程
イタリア・ミラノ市在住の医師から紹介を受けた,サンパオロ病院母子部門責任者マルコーニ・アンナマリア(Marconi Annamaria)産婦人科教授に,見学の目的と主旨を書面と口頭で直接説明,必要書類を提出し,病院見学の許可を得た。見学日程決定後,病院の管理部門に許可証発行を依頼した。病院からは見学までに労働者,学生,研修医,実習生のためのサンパオロ病院における労働上の危険とその予防,緊急時の対応の流れと倫理的規約について理解しておくことが義務付けられた。初日は病院見学のための身分証明書を作成した後に,見学を開始した。
◆イタリアにおける助産師とその役割ついて
イタリアにおける助産師は,法的に1994年9月14日省令第740号(Decreto Ministeriale 14 settembre 1994, n. 740)に定められている。イタリアでは助産師になるための教育はEUの指令77/452/EEC,77/453/EEC,および2005/36/CEを満たすこととされている2)。見学時に臨地実習を行っていたある助産師学生は,大学での助産師3年プログラム180単位,うち実習は68単位で,分娩介助は少なくとも40件実施することが必要とされており,自身は既に45件の分娩介助実習を経験したと話していた。
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