連載 海を渡る助産婦 長崎・五島列島で活躍した明松スナさんの手記・2
船で向かったお産の思い出
石川 紀子
1
,
小野 幸子
2
1総合母子保健センター愛育病院産婦人科外来
2前・小野医院
pp.140-143
発行日 2016年2月25日
Published Date 2016/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665200421
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明松スナ助産婦による手記 記録・小野幸子 加筆・石川紀子
子どもたちに送られて帰る
いくつか記憶に残っていることを書いてみましょう。
ある日,折島(図1)から,3日間痛まれている産婦がいるが,どうしても生まれないので,ぜひに来てほしいと,往診依頼がありました。不安を抱きながら青方港(図1)まで行くと,頭に鉢巻をし片肌を脱いだ出で立ちの,男女9人が乗った伝馬船(図2)がいて,「早うこの船へ乗ってくれんかな!」と急かされるまま乗り込むと,一気に漕ぎ出しました。「ヒッショイ! ヒッショイ!」の掛け声を合わせ漕ぐうちに,まもなく島へ着きました。抱きかかえるようにして降ろされた私は,案内役の後を足をもつらせながら走り,息せき切って患家先の敷居をまたぎました。
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