連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・120
貧困と子どもの病
冨田 江里子
1
1バルナバクリニック(フィリピン)
pp.558-559
発行日 2014年6月25日
Published Date 2014/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665102841
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昔,モルジブで働いていた時に,薬が買えずに亡くなっていく子どもをみることがあった。肺炎をこじらせており,抗生物質があれば助かる可能性は大いにあった。しかし,薬を買えない人を支援する術をその当時の私はもっておらず,後悔が今もある。自分を擁護する言い訳はいくつもできる。でも,その時の無念が今の私を動かし続けている。家や周囲で余っている不要な薬を,薬を買えない人のために送ってほしいとクリニックを始める時から訴え,現在にいたっている。これらの薬で,いったいどれだけの人が回復し助けられたことだろう。法の秩序を乱すことかもしれない。でも貧困で切り棄てられるのが当たり前の患者を救うには,この手段がいちばん手っ取り早かった。
ある程度の患者群に薬を使ってケアができるようになると,薬だけでは救えない子どもたちがいる事実が私の前に立ちふさがった。先天奇形などで,手術ができないと死んでいく子どもたちだった。親はお金がないから仕方ないと諦めてしまうケースだ。
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