- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
産後の体形回復には多くの女性が関心を寄せ,年々多くの運動が紹介されている。さらに,保健指導の現場でも成人以降の女性について,体重増加や身体組成の変化および筋持久力の低下が健康状態と深く関連する1)といわれている。産後の運動について歴史を振り返ってみると,1950年代より産褥期の母体を早期に回復するために産褥体操が取り入れられた。しかし家庭での継続が難しいことから,1980年代より産褥体操を実施する施設は減少した。
そこで,産褥体操に代わる産後の運動療法として,1987年には田中によりアフタービクスが考案された。アフタービクスは,産後5,6週から6か月の間,スタジオで行なわれる運動であり,インストラクターのリードのもとに行なうことで,無理なく適正な運動量が得られる。楽しさの要素が強いことと,グループで行なうため仲間づくりの場になることで,継続しやすいといわれている。アフタービクスの効果は,①全身持久力の強化,②乳汁分泌の促進,③筋群の機能回復促進,④姿勢の回復などが挙げられている。この中で,データなどを示し有効性が明らかにされているものは,全身持久力についてのみである2)。
近年,運動療法の有効性を検討する指標として用いられる姿勢について,高齢者においては,運動を行なうことで姿勢バランス機能が向上した3)という報告がみられる。妊娠期における姿勢4)や重心の変化5-7)などは明らかにされているが,産後の姿勢回復については,われわれが以前発表した,産後の姿勢は産後4か月でも後傾姿勢であり,姿勢の改善傾向はみられなかったという報告8)のみである。さらに,産後の運動療法の有効性を姿勢の変化から明らかにしているものはない。
女性のライフサイクルと身体運動について,川口9)は育児終了後の女性の人生の後半期が平均寿命の延長とともに長期化していることは,女性の意識や行動の変化を余儀なくしていると同時に,このライフサイクルにふさわしい身体運動の必要性を自覚し,習慣化への努力を喚起できるようにすることが大切であると述べている。妊娠・出産は,女性の身体の変化に関係する大きな要因である。産後の身体の変化を明らかにし,産後の運動指導を行なうことは,女性が運動習慣を獲得するだけでなく,後年の健康維持に大きく影響を与え,よりよい人生を送るために必要であると考える。
そこで本研究は,産後の姿勢に及ぼす運動習慣の影響を明らかにし,保健指導の基礎資料とすることを目的として検討を行なった。その際,妊娠中に伸展の著しい腹筋に着目し,姿勢とともに検討することとした。
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.