特別寄稿
卵子提供について多角的な視点から見る―アメリカでの調査から
柘植 あづみ
1
1明治学院大学社会学部
pp.710-713
発行日 2011年8月25日
Published Date 2011/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101962
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2011年1月,デンバー行きのチケットを予約したときには,大学の卒業式のあとにゼミ生と別れの名残を惜しみつつ,それでも清々しい気持ちで旅立つ予定だった。ところが,3月11日の地震以降,東京でも余震と原発事故,計画停電などによる首都圏の交通網の混乱で卒業式が中止となった。予定変更が続くあわただしさの中,海外調査に出かけてよいのかと逡巡しながら3月18日夜,羽田に向かった。
アメリカ合衆国コロラド州X市,それまでまったく馴染みがなかった地域に調査に1人で出かけることになったのは,アメリカ人の友人が私の研究に興味をもってくれたことに始まる。すでに2007年から「卵子のゆくえ」プロジェクトとして,カリフォルニア州の不妊治療クリニック(生殖医療センター)や卵子提供エージェンシーなどの調査をしていた。2010年夏の国際会議でその中間結果を発表するために,友人に英文チェックを頼んだ。それを丁寧に読んでくれた彼女が,X市のキーインフォーマントとなる人を紹介してくれた。
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