連載 本のなる樹・6
バオバブは役に立つ木なのです
さくま ゆみこ
pp.544-545
発行日 2009年6月25日
Published Date 2009/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101460
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バオバブは,サン=テグジュペリの『星の王子さま』に出てくるので有名になった。『星の王子さま』には,バオバブは毒気を発する恐ろしい災いの木として登場する。私も長いことバオバブは毒の木なのだと信じ込んでいた。
ところがアフリカに行って実物を見,人々がこの木とどう付き合っているのかを知って,私の見方は180度変わった。実際,バオバブほど役に立つ木はちょっとほかにない。芽や葉っぱは野菜として食べられるし,花は家畜のえさになるし,実の殻は楽器や食器になる。種のまわりの白い綿はビタミンCをたくさん含んでいるので,さわやかなジュースになる。綿のなかの小さな種をしぼれば食用油になり,木の皮の繊維はロープにしたり,編んでバッグやござや魚をとる網をつくる。そのうえ葉っぱも根っこも実のなかにある綿も自然の薬として働く。バオバブは何千年も生きるので,古木にはうろがあるのだが,そのうろはお店やバスの待合所に使われていたりもする。
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