連載 月便り・6
現代農業は月から学ぶ
志賀 勝
1
1月と太陽の暦制作室・〈月〉の会
pp.572-573
発行日 2008年6月25日
Published Date 2008/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101247
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「藍は新月から満月にかけて建つ」。染織家の志村ふくみさんが述べている言葉です。『たまゆらの道』(世界文化社,2001年刊)のなかにあるものですが,この本は娘さんの志村洋子さんと共著のもの。門外漢には藍建てのむずかしさは想像もできませんが,洋子さんは何度も失敗を繰り返していたそうです。ある満月の日,月の光を浴びた藍の華がぷくぷくと音をたてるように華を吐き出す様を見,彼女は快心の縹(はなだ)色を得たとのこと。「月のリズムを藍が受け入れ,月が藍を育んでこそ,目の覚めるような縹色はこの世に生まれでる」と貴重な体験談を同書に綴っています。
8年もの失敗の末,ついに日本で初めて農薬を使わないリンゴ造りに成功した木村秋則さんという方が弘前にいますが,この方とお会いしたとき,リンゴの葉は夜中の満潮・干潮で開いたり閉じたりしているという話をうかがったことがあります。木村さんにしても志村さん母娘にしても,その観察力は七十二候を生み出した人びとのように細やかで,藍やリンゴにいつも寄り添いながら生活している様が目に浮かぶようです。
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