連載 英国助産婦学生日記・その28
最良の別れ
日方 圭子
1
1英国・サリー大学助産課程学生(ダイレクトエントリーコース)
pp.443
発行日 2003年5月1日
Published Date 2003/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100529
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2月中旬からのひと月で大学での授業も最後になった。その期間はほとんど学位追加分の「栄養学」と「喪失について」の2教科に集中した。「喪失について」という単元は流産,死産,SIDSといった胎児・新生児の死のみではなく,広い意味での失ったもの,期待と違った結果を迎える場面(たとえば人工中絶,障害児が生まれたとき,自然分娩を理想としていた女性が帝王切開になった場合など)も含まれた。月曜日は1日中,この授業に当てられていたが,やはり,「死」という重たいテーマが扱われるだけに,この間の月曜日はいつもより憂うつな気分にさせられた。
授業中ふと,4度目の流産を語ってくれた友人のこと,母から聞いた祖母の死産体験,アルバイト先の婦人科病棟で出会った人たちのことを思い出した。特に記憶に残っている人たちがいる。再々の卵管妊娠での2度目の卵管切除をした21歳のジョー。妊娠12週目に小学校にあがる前の2人の娘を連れて定期の超音波診断のため来院し,そこで腹痛と出血に見まわれて自然流産してしまったハンナ。早期流産3度目,子宮内容除去術2度目のナオミ……。彼女たちの顔を思い浮かべながら「喪失」とは何かを考えた。彼女たちはいくら早期であっても胎児を赤ちゃんと認識していて,その失われた命は彼女たちに大きな影響を与えていた。自分のケアが行き届いていなかったことを反省した。
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