連載 臨床発ケーススタディ 乳房トラブルはこうしてなおそう・3
嚙むことによってできた乳頭乳輪亀裂のケア
武市 洋美
1
1オケタニ母乳育児相談室東京
pp.858-861
発行日 2005年9月1日
Published Date 2005/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100283
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はじめに
乳頭乳輪の亀裂や損傷,潰瘍,血胞,痂皮形成などは,主に母乳育児を開始した早々の産褥期によく起こるトラブルである。真菌などの感染による亀裂を除き,ほとんどは授乳時間,授乳回数などの制限をしなくても,抱き方・吸着方法を改善すると,母乳の分泌量の増加に伴って治癒していくものである。
ほかの乳頭のトラブルに,順調に母乳育児を続けていたのに,萌牙の時期,あるいは歯が生えそろう時期になって児に乳頭を嚙まれ,乳頭乳輪に深い亀裂ができる場合がある(写真1)。児が1歳近くであると,母親は児が乳頭を嚙んだことを子どもからの「乳離れのサイン」と受け取り,母乳育児を止めてしまうことがある。傷が癒えるまで搾乳をしてコップや哺乳ビンで飲ませようとしても,児はそれらを受け付けず,乳房からの母乳を求めて泣き叫ぶ。嚙まれる痛みに耐えながら母乳育児を継続しているうちに,亀裂はますます深くなり,母親は痛みのあまり「児をかわいく思えない」「思わず放り出したくなる」と,子どもに対する感情まで悪化してくる。
なぜ嚙む子どもがいるのか,その原因や予防法は知られていない。私の母乳育児相談室には,6か月から1歳前後の母乳育児中の咬傷に関する相談が多くあり,できる限り母乳育児を継続する方向で,さまざまな乳房ケアを対症療法的に行なっている。本稿では,主にテーピングしながら母乳育児を継続した1事例について紹介する。
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