特集 ―胎児の心地よい環境に必要なこと―妊娠と高血圧のメカニズムを知ろう
肥満と高血圧
望月 善子
1
,
稲葉 憲之
1
1獨協医科大学産科婦人科学
pp.804-808
発行日 2005年9月1日
Published Date 2005/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100275
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はじめに
肥満は脂肪組織が過剰に蓄積した状態と定義され,遺伝的要因と環境要因の相互作用により発症する多因子疾患と考えられている。また,メタボリックシンドロームといった新しい疾患概念で規定されるように,糖尿病,高脂血症,高血圧などの健康障害を合併しやすく1),さらに産科的には妊娠高血圧症候群,妊娠糖尿病,HFD児の発症と密接に関連し,種々の周産期合併症を増加させる要因となる(表1)2)。
最近の米国の報告によると,わが国の肥満とは程度は異なるが,肥満群,著明な肥満群で妊娠高血圧症,子かん前症ともにその発症率は増加し(表2)3),帝王切開率上昇の独立した因子であると確認された。
メタボリックシンドロームは高血圧や肥満,耐糖能異常など,それぞれの病態の共通因子であるインスリン抵抗性が基盤にあるとされているが,妊娠高血圧症候群の発症においても,このインスリン抵抗性症候群と類似の機序が考えられており,肥満妊婦において妊娠高血圧症候群の発症が多いことを裏付ける根拠の1つになっている。別稿で妊娠と血圧のメカニズムに関する記述があるので,本稿では一般的な肥満に伴う高血圧の機序とともに,その予防対策について概説する。
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