Current Focus ●放射線
―子どもと私たちの生活における―放射線被ばくの健康リスクを考える
島田 義也
1,2
,
西村 まゆみ
1
,
柿沼 志津子
1
,
今岡 達彦
1
,
大町 康
1
1放射線医学総合研究所低線量生体影響研究プロジェクト
2放射線医学総合研究所放射線安全研究センター
pp.634-639
発行日 2005年7月1日
Published Date 2005/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100245
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
私たちの生活環境は,健康をおびやかす種々の因子があふれています。タバコはもちろんのこと,食品中にもわずかながら農薬,水銀やカドミウムなどの人工化学物質や重金属が含まれています。最近は,感染症であるBSEや鳥インフルエンザなどプリオンやウィルスも話題になっているのはご存知のとおりです。
がんに関するものでいいますと,タバコと食生活が2大原因です(図1)。タバコには1000種以上の化学物質が含まれ,そのなかのニトロソアミンやベンツピレンは強力な肺がんの原因物質です。食品のなかにも,肉のこげ成分のヘテロサイクリックアミン,フライドポテトに含まれるアクリルアミド,魚肉中のアミン類と野菜や食品添加物の亜硝酸ナトリウムの摂取により生成されるニトロソアミン,ピーナッツやピスタチオのカビ成分であるアフラトキシン,飲料水中のヒ素など多種多様な発がん物質が存在し,それらは乳がんや大腸がん,肝がんの原因となっています。
また,肝炎ウィルス,パピローマウィルス,エイズウィルスなどウィルスもヒトの発がんの原因となっています。自動車のガソリンから発生するベンゼンも白血病の原因です。
このような多くの物質のヒトへの発がん性は,WHOの研究機関である国際がん研究センター(IARC)で評価され,データベースとしてまとめられています。2004年までに,900種類の物質について調べられ,ヒトへの発がん性があると判断された物質(グループ1)が95種類,おそらくある物質(グループ2A)が66種類,ある可能性がある物質(グループ2B)が241種類報告されています。
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.