特集 実録!正常出産カンファレンス
「出産のユートピア」の語り方
荻野 美穂
1
1大阪大学大学院文学研究科
pp.328-329
発行日 2005年4月1日
Published Date 2005/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100188
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身体と向き合う転換点
歴史的に見るとフェミニズムの思想のなかには,妊娠・出産能力を女にしかないすばらしい特質として賛美する立場と,これこそが女を公的世界から排除し,男とは異なる地位や役割に縛り付けるための口実になってきたのだとして,身体的性差にふれることを回避しようとする立場との,両方の流れが存在してきた。
現在のフェミニズム理論で主流となっているのは後者で,性差についてのあらゆる概念(ジェンダー)は社会的に構築されたものにすぎないと強調するあまり,月経・妊娠・出産など,メスとしての自分の身体そのものに向き合わざるを得ないような生々しい話題には人気がない。あるいはそうした問題に向き合わざるをえない場面では,ホルモン剤やさまざまな医療技術の力を借りて,できるだけ身体を自分の意思のままにコントロールし,支配しようとする傾向が強い。
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